行政が喜ぶ企画提案書の作り方とは
~「伝えたいことを書く」のではなく、「審査員が評価しやすい形にする」ことが重要です~
自治体や官公庁のプロポーザルに参加するとき、多くの企業が最も力を入れるのが企画提案書です。
自社の実績をどう見せるか。
どんなアイデアを盛り込むか。
どれだけ他社との差を打ち出せるか。
もちろん、どれも重要です。
しかし、行政向けの企画提案書では、単に「良いことを書く」だけでは十分ではありません。
行政側が評価しやすい企画提案書には、いくつかの共通点があります。
業務が発注された背景を理解していること。
評価基準と提案内容の対応関係が分かりやすいこと。
各ページで「何を提案しているのか」が明確であること。
そして、専門外の審査員が読んでも理解できること。
企画提案書を行政向けに作るときは、企業が「言いたいこと」から書き始めるのではなく、行政が「知りたいこと」「評価したいこと」から構成を考えることが大切です。
これは、プロポーザルの勝ち方を考えるうえでも非常に重要な考え方です。
目次
1. 行政向け企画提案書は「作品」ではなく「評価資料」
2. まず業務が発注された背景を理解する
3. 評価基準と提案内容を一対一で対応させる
4. 各ページで「何を提案しているか」を明確にする
5. 審査員は必ずしもその分野の専門家ではない
6. 分かりやすい企画提案書にするための構成
7. 行政が喜ぶ企画提案書とは何か
1. 行政向け企画提案書は「作品」ではなく「評価資料」
企画提案書を作るとき、つい「きれいな資料にしよう」「印象に残る資料にしよう」と考えがちです。
見た目が整っていることは大切です。
読みやすいデザインや図表も、理解を助けるためには有効です。
ただし、行政向けの企画提案書で最も重要なのは、デザイン性ではありません。
審査員が評価基準に沿って点数をつけやすい資料になっているかどうかです。
プロポーザルでは、多くの場合、評価項目や審査基準が示されています。
業務理解。
実施方針。
企画内容。
実施体制。
実績。
スケジュール。
独自提案。
案件によって項目は異なりますが、行政側は何らかの基準をもとに提案書を比較します。
そのため、企業側がどれほど魅力的な内容を書いていても、審査員が「この内容はどの評価項目に対する回答なのか」を探さなければならない資料では、評価しにくくなります。
行政向け企画提案書は、自社の魅力を自由に表現するパンフレットではありません。
「行政が確認したいこと」に対して、
「当社はこう考え、こう実施します」
と明確に回答していく資料です。
ここを理解するだけでも、企画提案書の作り方は大きく変わります。
2. まず業務が発注された背景を理解する
行政が喜ぶ企画提案書を作るうえで、最初に重要なのが「業務理解」です。
仕様書に書かれている業務内容を理解するだけではありません。
なぜ、この業務が必要になったのか。
ここまで考えることが重要です。
たとえば、「情報発信業務」という発注があったとします。
単純に考えれば、WebサイトやSNS、パンフレットなどを使って情報を発信する仕事です。
しかし、その背景にはさまざまな課題が考えられます。
行政から情報を出しているのに住民へ届いていない。
若年層への情報発信が弱い。
観光客への認知が不足している。
複数部署から情報が出ていて分かりにくい。
地域の魅力が十分に伝わっていない。
どの課題を解決したいかによって、最適な提案は変わります。
つまり、仕様書に書かれた「何をするか」だけを見るのではなく、「なぜそれをするのか」まで読み解く必要があります。
そのためには、公募資料だけでなく、関連する行政計画、過去の事業、報道発表、予算資料などを確認することも有効です。
そこから発注の背景を推測し、提案書の冒頭で、
「本業務の背景には○○という課題があると認識しています」
と示すことができれば、行政側には「この企業は業務の意味を理解している」という印象を持ってもらいやすくなります。
自治体提案営業において、業務理解は提案書全体の土台です。
土台がずれていれば、どれほど魅力的なアイデアを並べても、行政が求める方向とはずれてしまいます。
3. 評価基準と提案内容を一対一で対応させる
行政向け企画提案書を作るうえで、非常に重要なのが評価基準です。
プロポーザルでは、行政側が公表している評価基準が、いわば「採点表」です。
ところが、提案書を作る企業の中には、この評価基準を十分に意識せず、自社が説明したい順番で資料を構成してしまうケースがあります。
たとえば評価基準に、
・業務目的の理解
・実施手法の妥当性
・実施体制
・スケジュール
・独自性
と書かれているのであれば、企画提案書も、その評価項目が見つけやすい構成にした方が分かりやすくなります。
審査員が評価表を見ながら提案書を読んだとき、
「業務理解については、このページ」
「実施手法については、このページ」
「体制については、このページ」
とすぐ確認できる状態が理想です。
これは単に目次を合わせればよいという話ではありません。
それぞれの評価項目に対して、自社が何を提案しているのかを明確に答える必要があります。
評価基準が「実施手法の具体性」を求めているのに、理念や考え方ばかりを書いていては評価しにくくなります。
「実施体制」が評価される項目であれば、担当者名だけでなく、役割分担、意思決定、連絡体制、リスク発生時の対応などまで説明した方が伝わりやすくなります。
企画提案書を行政向けに作るときは、評価基準を読み、
「この評価項目で、審査員は何を確認したいのか」
を一つずつ考えていくことが重要です。
4. 各ページで「何を提案しているか」を明確にする
評価されやすい企画提案書には、もう一つ重要な特徴があります。
それは、各ページで言いたいことが明確だということです。
提案書を読んだとき、
「このページは何を説明しているのだろう」
「結局、何をやるという話なのだろう」
と考えなければならない資料は、審査員に負担をかけます。
特にプロポーザルでは、複数社の提案書を短期間で確認しなければならない場合があります。
そのため、各ページを見た瞬間に、
「何を提案しているのか」
「なぜ必要なのか」
「どんな効果があるのか」
が分かる構成にすることが大切です。
たとえばページのタイトルを、
「広報施策について」
とするより、
「若年層への接触機会を増やすため、SNS広告と地域メディアを組み合わせます」
とした方が、ページを開いた瞬間に提案内容が伝わります。
企画提案書では、見出しそのものを「結論」にする考え方が有効です。
その下に、
課題
↓
提案内容
↓
実施方法
↓
期待効果
という順番で整理すれば、論理も追いやすくなります。
行政に評価してもらう資料では、読む人に推測させないことが重要です。
「分かってもらえるはず」ではなく、「一読して分かる」状態まで言語化する。
この意識が、企画提案書の分かりやすさを大きく変えます。
5. 審査員は必ずしもその分野の専門家ではない
行政向け企画提案書を作るとき、特に注意したいのが専門用語です。
企業側からすれば当たり前の言葉でも、審査員全員がその業界に詳しいとは限りません。
プロポーザルの審査では、担当部署の職員だけでなく、関連部署や管理職などが審査に加わる場合もあります。
そのため、専門知識がある人だけに分かる提案書では不十分です。
たとえば、IT、広告、マーケティング、観光、福祉、DXなど、それぞれの業界には専門用語があります。
企業側は普段から使っているため、説明なしでも通じると思いがちです。
しかし、行政向け企画提案書では、その分野を初めて見る人でも分かる書き方を意識した方が安全です。
専門用語を使う場合には、一言説明を入れる。
横文字ばかりを並べない。
複雑な仕組みは図で示す。
数字には、その数字が意味することを書く。
また、図表を入れたからといって、それだけで説明したことにはなりません。
図を見れば分かるだろう、グラフを見れば理解できるだろう、と読者任せにするのではなく、
「この図から何が分かるのか」
「だから何を提案するのか」
を文章でも明確にする必要があります。
行政が喜ぶ企画提案書とは、難しいことを難しく書いた資料ではありません。
難しい内容を、誰でも判断できるところまで分かりやすくした資料なのです。
6. 分かりやすい企画提案書にするための構成
では、行政向け企画提案書は、どのような流れで作ればよいのでしょうか。
案件ごとの指定様式や評価項目を優先することが前提ですが、基本的には次のような流れで整理すると、内容が伝わりやすくなります。
① 業務背景・現状
なぜこの業務が必要になったのかを整理します。
② 課題認識
行政や地域が抱えている課題を、自社なりに整理します。
③ 提案方針
その課題に対して、どのような考え方で事業を進めるのかを示します。
④ 具体的な実施内容
誰が、何を、どのように行うのかを具体化します。
⑤ 自社ならではの工夫
他社との違いや、自社だから提供できる価値を示します。
⑥ 実施体制
担当者、役割分担、連絡方法、バックアップ体制などを整理します。
⑦ スケジュール
業務をどのような手順で進めるのかを示します。
⑧ 成果・効果
事業によって何が改善されるのか、どのように成果を確認するのかを示します。
ここで重要なのは、この構成を機械的に当てはめることではありません。
公募要領や評価基準を確認し、審査員が評価しやすい順番へ調整することが必要です。
そして、一つひとつのページについて、
「このページは、どの評価項目への回答なのか」
「このページで審査員に何を理解してほしいのか」
を確認します。
このチェックを行うだけでも、企画提案書の無駄はかなり減ります。
自治体営業では、たくさん書くことより、必要な内容を必要な場所に置くことの方が重要です。
7. 行政が喜ぶ企画提案書とは何か
行政が喜ぶ企画提案書とは、派手な資料でも、ページ数の多い資料でもありません。
行政側から見て、
「業務の背景をきちんと理解している」
「こちらが評価したい内容がすぐ見つかる」
「何を提案しているのかが明確である」
「専門外の人が読んでも分かる」
という提案書です。
プロポーザルの勝ち方を考えるとき、どうしても奇抜な企画や競合との差別化に意識が向きます。
もちろん、自社ならではの強みは必要です。
しかし、その強みも行政側に理解され、評価基準に沿って評価されなければ点数にはつながりません。
だからこそ、企画提案書を行政向けに作るときは、まず発注背景を理解する。
次に評価基準を読み込む。
その評価項目に対して、自社の提案を一つずつ対応させる。
そして、専門知識がなくても分かる言葉で説明する。
この基本を徹底することが重要です。
良い企画提案書とは、「こちらが言いたいことを全部書いた資料」ではありません。
行政が知りたいことに、分かりやすく答えた資料です。
自治体提案営業やプロポーザルで成果を出すためには、この「相手が評価しやすい資料を作る」という視点を、企画提案書づくりの中心に置くことが大切なのです。
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