COLUMN コラム

行政営業は「売り込み」ではなく「設計」

行政営業は「売り込み」ではなく「設計」

 

行政営業は「売り込み」ではなく「設計」です
~うまくいく会社ほど、最初から“売る”ことだけを考えていません~

 

行政に向けて営業をしようとすると、多くの会社はまず「何をどう売り込むか」を考えます。
自社の強みをどう伝えるか。どんな提案書を持っていくか。どのサービスを前面に出すか。
民間営業の感覚で考えれば、これは自然な発想です。

しかし、行政営業では、この「売り込み」の発想が強すぎると、かえってうまくいかなくなることがあります。
なぜなら行政は、単に商品やサービスを買う相手ではなく、住民福祉や地域課題の解決という目的の中で動いている組織だからです。
そのため、民間向けと同じ感覚で「うちにはこういう強みがあります」「ぜひ導入してください」と前に出すだけでは、話が深まりにくいのです。

行政営業で本当に大切なのは、売り込むことよりも、相手の課題、時期、部署、政策の流れ、庁内での通しやすさまで含めて、提案が届く形を整えることです。
つまり行政営業は、「売り込み」ではなく「設計」なのです。

行政は、「欲しいもの」より「必要なもの」で動く
民間営業では、相手のニーズや関心を刺激し、「これは便利そうだ」「今導入したい」と思ってもらうことが重要になります。
もちろん行政にもニーズはありますが、その性質は民間とは少し違います。

行政が重視するのは、「それが本当に地域課題に必要か」「住民にとって意味があるか」「政策や施策の流れに合っているか」「予算や制度の中で説明できるか」といった点です。
つまり、「あると良さそう」だけでは動きにくく、「なぜ必要なのか」が整理されていなければ前に進みにくいのです。

ここを理解せずに売り込み型の営業をしてしまうと、企業側は一生懸命でも、行政側には「何を勧められているのかは分かるが、うちで扱う理由が見えない」と映ることがあります。
だからこそ行政営業では、魅力を伝える前に、必要性をどう位置づけるかを考える必要があります。

売り込みの営業は、「自社中心」になりやすい
行政営業がうまくいかない会社の多くは、無意識のうちに自社中心の組み立てになっています。
「うちは何ができるか」
「どんな実績があるか」
「どれだけ優れているか」
もちろん、これらは提案に必要な要素です。
ただ、それを先に出しすぎると、行政側の頭の中では「で、それがうちの何につながるのか」という疑問が残りやすくなります。

売り込み型の営業は、自社の話を強くしやすい一方で、相手の状況や文脈に合わせる余白が小さくなります。
その結果、内容自体は悪くなくても、「この自治体向けの話」ではなく、「誰にでも持っていける営業資料」に見えてしまうことがあります。

行政営業では、自社の魅力を語る前に、まず相手の課題や立場に沿って話を組み立てることが必要です。
この順番の違いが、とても大きいのです。

設計とは、「誰に・いつ・どの切り口で届けるか」を考えること
では、行政営業における「設計」とは何か。
それは単に提案書を整えることではありません。
もっと手前の段階から、営業全体の組み立てを考えることです。

たとえば、
・このテーマはどの部署と接点がありそうか
・今は情報提供のタイミングなのか、具体提案のタイミングなのか
・今年度の話として持ち込むべきか、来年度を見据えるべきか
・地域課題のどこに結びつけると伝わりやすいか
・担当者が庁内で説明しやすい形になっているか
といったことを、事前に考える必要があります。

これはまさに設計の仕事です。
ただ商品を紹介するのではなく、相手の世界の中で届くように、入口も、順番も、言葉も、出し方も整えていく。
行政営業がうまくいく会社は、この設計をかなり丁寧にやっています。

良い提案でも、設計が弱いと届かない
行政営業では、提案内容が良いだけでは足りないことがあります。
なぜなら、その提案がどれだけ優れていても、持っていく相手、時期、切り口がずれていれば、話が前に進みにくいからです。

たとえば、本来は企画部門や政策部門と相性の良い話を、個別事業の担当課にだけ持ち込んでしまう。
あるいは、予算や方針がほぼ固まった段階で新しい話を持ち込んでしまう。
さらに、行政にとって重要な「住民への効果」や「政策との整合」を整理しないまま、自社サービスの魅力ばかりを説明してしまう。
こうした状態では、内容が悪くなくても届きにくくなります。

つまり、行政営業では提案の良し悪しだけでなく、その提案が通るように周辺条件まで整えられているかが重要なのです。
この感覚があるかどうかで、営業の質はかなり変わります。

設計できる会社は、行政の時間軸を理解している
行政営業で結果を出す会社は、行政の動きが民間とは違うことを前提にしています。
「良いものだからすぐ導入される」とは考えていません。
予算編成、計画策定、庁内調整、議会との関係、事業化の流れなどを踏まえたうえで、どの時期にどんな話をするかを見ています。

この時間軸を無視して売り込み型で動くと、「興味はあるが今ではない」「その方向性はすでに決まっている」「来年度なら可能性がある」といった状態が起きやすくなります。
企業側から見ると手応えがなく感じられるかもしれませんが、実際にはタイミング設計の問題であることも少なくありません。

設計できる会社は、ここを焦りません。
今は関係づくりの段階か、情報提供の段階か、提案を具体化する段階かを見極めています。
そのため、一見遠回りに見えても、結果として話がつながりやすくなります。

設計できる会社は、担当者の立場まで考えている
行政営業では、目の前の担当者が関心を持ってくれることは大切です。
ただし、それだけでは十分ではありません。
担当者は個人として動いているのではなく、組織の中で動いています。

そのため、設計できる会社は、担当者が庁内で説明しやすい形を意識しています。
なぜ必要なのか。どの課題に対応するのか。実施した場合にどんな効果が見込めるのか。既存施策とどうつながるのか。予算や手続きのイメージはどうか。
こうしたことが整理されていると、担当者は上司や関係部署に話を持って行きやすくなります。

反対に、売り込み型の営業では、「良さ」は伝わっても、「どう通せばいいか」が見えにくくなりがちです。
行政営業では、相手を納得させるだけでなく、相手が次に動けるようにしてあげることも必要なのです。

売り込む前に、「翻訳」することが欠かせない
行政営業では、自社の強みをそのまま話すだけでは不十分です。
民間の価値を、行政の言葉に翻訳する必要があります。

たとえば、民間で言う「売上向上」は、行政に対しては「地域事業者の活性化」や「地域内経済への波及」として語る方が伝わりやすいことがあります。
「業務効率化」は、「職員負担の軽減」や「住民対応の迅速化」として整理した方が分かりやすいこともあります。
「新規顧客獲得」は、「交流人口の拡大」や「地域認知の向上」といった表現に置き換えた方が、行政の文脈に乗りやすい場合があります。

この翻訳をせずに売り込むと、企業側は一生懸命でも、行政側には民間向けの営業資料を見せられているように感じられることがあります。
設計できる会社は、最初からこの翻訳を組み込んでいます。
だから話が伝わりやすく、行政の中でも扱いやすくなるのです。

行政営業は、「受注」より前に「接続」をつくる仕事でもある
行政営業を売り込みと考えると、どうしても「案件を取る」「受注につなげる」ことばかりが前面に出やすくなります。
もちろん、企業として最終的に受注を目指すのは自然なことです。
ただ、行政営業では、その前にやるべきことがあります。

それは、自社の強みと地域課題、自社のサービスと行政の施策、自社の提案と相手のタイミングを、きちんと接続することです。
この接続ができていない状態で売り込んでも、話は深まりません。
反対に、接続ができていれば、最初は小さな情報交換でも、後に案件化や相談につながる可能性が出てきます。

つまり行政営業とは、単に売る行為ではなく、自社の価値が行政の仕事の中で意味を持つように接続を設計する仕事でもあるのです。

行政営業は「売り込み」ではなく「設計」です
行政営業が難しいのは、商品が悪いからでも、営業力が足りないからでもないことがあります。
多くの場合は、売り込みの発想が強すぎて、相手の課題や動き方に合わせた設計が足りていないのです。

行政営業で大切なのは、まず相手を知ること。
地域課題を知ること。
政策の流れを知ること。
どの部署に、いつ、どんな切り口で話を持っていくかを考えること。
担当者が次に動きやすい形まで整えること。
そうした一つひとつの設計があって、はじめて提案は現実味を持ちます。

行政営業は「売り込み」ではなく「設計」です。
この見方に変わるだけで、営業の準備も、話し方も、提案の組み立て方も大きく変わってきます。
そしてその変化が、行政との距離を縮め、受注や連携の可能性を少しずつ現実的なものにしていくのです。

 

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