今回は「仕様化提案」についてお話しします。官公庁・自治体に対して、いくら事業提案を頑張ってやってきても、この「仕様化提案」ができていないと、いざ発注になった時に競合他社と有利に戦えません。
仕様化提案とは
官公庁・自治体が事業を発注する際には、必ず「発注仕様書」が提示されます。発注する内容について、細かく規定したものです。もちろんこれは自治体側が作成するものですが、これまで事業提案してきた企業に対して「仕様提案してくれる?」と依頼されることがあります。または、自治体から言われなくても「仕様についてもご提案しましょうか?」といってこちらから仕様内容についてご提案していきます。 これが「仕様化提案」です。
大前提として、
「自治体のその事業にとって不可欠な要素、要件」
を漏れなく記載していくわけですが、その中に
『当社でないとできない要件』あるいは
『当社なら他社より安く実現できる要件』
を盛り込めると、いざ発注された際に、自社が有利な状況を実現できます。
イベント企画における仕様化提案の場合
例えば、市民向けのイベント企画・運営事業の場合だとすると、以下のような仕様化提案が考えられます。
項目(例) | 自社に有利な仕様の例 |
経験・実績要件 | 「過去3年間に同種のイベント実績が3件以上あること」→ 経験豊富な自社が有利 |
技術要件 | 「○○という配信システムに対応していること」→ 自社が使い慣れている機材やソフト |
スケジュール | 「準備期間が短いが、対応可能なこと」→ 素早く動ける体制がある会社が有利 |
提案内容 | 「○○な演出や仕掛けを含むこと」→ 自社だけができる独自の企画を前提にする |
地域要件 | 「○○市内に拠点を有すること」→ 地元企業に限定すれば競合が減る |
注意すべきポイント
ここで注意すべきポイントは、「あくまでその事業のために必要不可欠」という必要性と、「あくまで公正競争を阻害してはならない」という公正性です。
例えば、仕様要件が違えば、それに応じて必要な経費も変わってきます。自治体が支出する経費は税金でまかなわれていますので、無駄な支出は許されません。従って、仕様書に記載する内容は、その事業にとって欠くことのできない必要不可欠な要素であるということが大前提となります。いくら自社に有利になるからと言って必要でもない要件を提案することは、税金の無駄遣いを誘導していることになるので、自治体からの信頼を失うことになりかねません。
また、その事業に本当に必要不可欠な要件であれば、自社に有利な仕様を提案したとしてもそれは必要な提案と認められますが、自社に有利だからと言って必要不可欠でない要件を提案すると、それは公正競争を阻害しようとしたことになってしまいます。
必要性を説明する根拠資料の準備
前述したように、仕様書の各項目で記載する事項については、「その事業にとって必要不可欠かどうか」が問われます。従って、予算要求の段階では財政課ヒアリングの中でそこを追及されることもありますし、予算化された後で仕様書を作成して自治体内稟議を上げる際にも、仕様の補足説明資料が必要になることがあります。
従って、「なぜその仕様が必要不可欠なのか?」を客観的に説明できる資料が必要になり、提案事業者にそれが求められることが多々ありますので、仕様提案に際して予め準備しておくようにしましょう。
まとめ
ここまでお話ししたように、事業提案に続いて重要になるのが「仕様化提案」です。その事業に必要な要件について、自社の強みを意識しつつ、提案していくことです。しかし決して自社贔屓な独りよがりにならないよう、その提案要件の「必要性」と「公正性」を十二分に念頭に置いて仕様化提案することが、真に自治体に有意義な施策を提案することになり、自治体との信頼を築くことに繋がります。
ぜひそのポイントをしっかり押さえて、自治体と自社とがwin-winになれる良い仕様化提案を進めましょう。
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